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〜日本歯科道具学会10年の歩み(下)〜

本会は設立以来、このように毎年、総会および「研究発表大会」を開催し、会員による日常臨床に役立つアイ
ディア製品の発表の他に、話題性のある特別講演やシンポジウムなどを企画してきました。その他に、本会の
特色として毎回、一般発表の中から優れた発表を選び、発表者には「道具大賞」を授与してきました。以下に
初期の頃の研究発表大会の第1回から第5回までの「道具大賞受賞者リスト」を紹介します。

第1回研究発表大会
 ◎大賞:荒井敏夫 先生  東京都・荒井歯科医院(勤)
     演題『私の考案改良した歯科道具のいろいろ』
 ◎佳作:大坪建夫 先生  福岡県大牟田市・大坪歯科医院(勤)
     演題『シンプル重合器について』
 ◎佳作:須賀康夫 先生  名古屋市・須賀歯科医院(勤)    
     演題『補綴物の不適合(不具合)クイックチェックについて』

第2回研究発表大会
 ◎大賞:藤井万弘 先生  東京都小金井市・医療法人社団弘歯会(勤)
     演題『効果的なバキュームの試作』
 ◎佳作:藤井佳朗 先生  名古屋市・藤井歯科(勤)  
     演題:『全身姿勢観察用器具 藤井式姿勢チェッカー』
 ◎佳作:平泉久志 先生  北海道栗沢町・三嶋歯科医院栗沢院(勤)
     演題『ダブルフレキシブルバキュームマウスシステムについて』

第3回研究発表大会
 ◎大賞:安藤正実 先生、久光 久 先生  名古屋市・安藤歯科クリニッ
     ク(勤)
     演題『エアータービンハンドピース殺菌装置の開発』
 ◎佳作:川上 昇 先生  総社市・開業
     演題『モデルシールDの便利な使用法』
 ◎努力賞:長田英治 先生  山梨県甲府市・長田歯科医院(勤)
     演題『バキュウム付根管洗浄器』

第4回研究発表大会
 ◎金賞:竹田晴見 先生  大阪電気通信大学工学部・教授
     演題『コンデンサを用いた瞬間充電可能な電動歯ブラシ』
 ◎銀賞:今井元次 先生  大阪市・医療法人若葉会 今井小児歯科(勤)
     演題『形状記憶合金を利用した歯牙固定法』
 ◎銅賞:葭田秀夫 先生  埼玉県皆野町・葭田歯科医院(勤)
     演題『根管処置(作業長)の簡便化の工夫・他』

第5回研究発表大会
 ◎金賞:清水 友 先生、倉本佳明 先生、宮崎 隆 先生、小川和男 先生
     演題『歯科用自動洗浄機』
 ◎銀賞:斎藤 毅 先生、福田裕文 先生、山岡 大 先生
     演題『絶縁被覆根管リーマーの開発と臨床応用』
 ◎銅賞:福辻 敏 先生  大阪市・副辻歯科医院(勤)
     演題『形状記憶アタッチメント義歯』

〜医用歯科機器発展の展望〜

 我々が日常の臨床で使用しています機器類について考えて見ますと、大は治療用のチェアやユニットをは
じめとして、小は棒物やバー・ポイントに至るまで、数多くの種類が市販されていて、我々はそれらの中から
適当なものを選択して使用しているのが実状のようです。しかし、本学会の目的として掲げていますように、
歯科医療に従事する専門職である我々は、使用する機器類の機能や構造についての正しい知識と明確な見解を
持つとともに、機器類を実際に使用する上での創意工夫を心がける必要があると思います。その他、機器類を
製造するメーカー側に対し、機会があれば性能や使い勝手について恒に意見を表明することも大切かと思いま
す。
 これから導入される新しい診療用の機器について考えてみますと、歯科診療がより正確にリーズナブルな料
金で短時間で行われることに役立つものが出現すると思います。それらの主体をなすものは、コンピュータ関
連の機器類で、既に我々の周囲に多くのものが出現しています。その例を挙げますと、治療用のユニットや椅
子の制御機構もその一つで、これからは、ドクターが行う診療内容を先取りして動作を制御したり、診療中は
恒にドクターの行為をモニターし、危険な状態になる前に安全対策を講じる、と、いったことが当たり前にな
ると思います。現在も、レセプトはコンピュータで処理されるようになってきていますが、これからはカルテ
(診療録)も電子カルテになり、その入力方法も、音声入力になるものと思います。そのようになりますと、一
人の患者についての診療に関する全ての情報が、画像や映像も含めてファイルされ、必要に応じて疫学的調査
に役立てたり、他の診療機関に送ることも可能になります。
 その他、補綴物などの技工物の製作方法も現在の手作業を主体とした作業が、最近になって導入されつつあ
ります機械加工(CAD/CAM)に変わり、それが一般的になるものと考えられます。 

[おわりに]
 このように、歯科診療はますます高度化し複雑化し、それに応じて高度な機能を持った診療用の機器類が日
常的に使用されるものと思われます。その様な時代に対応するためには、それらの機器類の操作に習熟するこ
とは勿論ですが、これらの機器類はあくまでも診療を行う上で我々の五感や手足の動きを補うために使用する
のであることを忘れないことです。これを忘れますと、我々は器械の奴隷になってしまいます。

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